第39回日本中毒学会総会・学術集会開催にあたって

第39回日本中毒学会総会・学術集会開催を、2017年6月30日(金)および7月1日(土)につくば市のつくば国際会議場で開催することになりました。大変名誉なことと存じます。私は本学会が「急性中毒研究会」として活動していた1980年代前半から恩師の一人である筑波大学名誉教授内藤裕史先生に導かれ臨床中毒学の世界に関わることになりました。本学会の総会・学術集会が茨城県で開催されるのは、当時はまだ「研究会」の名称でしたが、やはり恩師の一人である筑波大学附属病院救急部(当時)山下衛先生が1986年に開催された時以来、約30年ぶりです。

本学術集会のテーマを、「災害と中毒」としました。中毒は災害と密接な関係があります。1984年にインド・ボパールにおいて発生したイソシアン酸メチル漏出事故では15,000人から20,000人が死亡し、史上最悪の産業化学災害といわれています。自然災害においても様々な中毒発生のリスクがあります。東日本大震災の際、福島では原発がメルトダウンに至る損傷を受けたたことは記憶に新しいことです。先進国においても工業地帯が大地震に襲われた場合、ボパールの様な事故が発生する可能性はないでしょうか。火山活動に伴う硫化水素中毒は、火山の多い日本においてしばしば発生し、規模は様々ですが常に発生のリスクがあります。1986年には中部アフリカ・カメルーンのニオス湖周辺で二酸化炭素の噴出が原因と考えられる中毒事故が発生し、約2,000人と多数の動物が死亡しました。1997年に八甲田山で訓練中の自衛隊員20人が被災した事故も二酸化炭素が原因とされています。また、東日本大震災直後は、電気・ガスの途絶に伴い、一酸化炭素中毒が散発したことが報告されています。本学術集会では、これらのテーマについて情報を共有するとともに多角的に議論し、被害の予測、対策等の知見を深めたいと思います。

特別講演/教育講演として、高橋祥友先生(筑波大学医学医療系 災害精神医学)「災害時メンタルヘルス」、岡本健先生(順天堂大学浦安病院救急診療科)「大規模災害とBCP」(仮題)、奥村徹先生(警視庁)「CBRNE対処入門」(仮題)などを予定しています。また、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップのテーマとして、「集団発生中毒(仮題)」、「急性二酸化炭素中毒」、「中毒センターの役割」、「中毒ER診療(仮題)」、「隠れた母と子の中毒」などを準備中です。日本毒性学会との合同企画、クリニカルトキシコロジスト認定/更新セミナーおよび認定試験、フォトコンテスト、機器展示なども例年どおり実施いたします。会期に合わせ、学会テーマと関係の深いMCLS(Mass Casualty Life Support)-CBRNE(Chemical Biological Radiological Nuclear Explosive)コースを開催する予定です。また、企画に関しては今後学会ウェッブページでも公募いたしますので、奮ってご提案を頂ければ幸いです。

本学会は、設立当初から、医師、獣医師、薬剤師、臨床検査技師、看護師、臨床工学技士、基礎研究者、行政関係者など、多職種が関わることにより活性化されてきました。本学術集会参加および発表は、各々、日本臨床救急医学会救急認定薬剤師認定の際、単位として加算されます。多職種にわたる多く方々の参加と活発な討論を期待しています。

会場の「つくば国際会議場」は「つくば駅」から徒歩で6〜7分の距離にあり、つくばエクスプレスを利用すれば秋葉原から「つくば駅」まで快速なら45分で到着します。つくば市には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センター、つくばエキスポセンター、つくば実験植物園、多くの公園など、見所やリラックスできる場所が沢山あります。また、少し足を伸ばして、日本百名山の一つとされる筑波山に赴き、健脚の方は徒歩で、お急ぎの方はケーブルカーで山頂付近に到れば関東平野が眼下に一望できます。本学術集会を機に「つくば」に親しみ楽しんで頂けることを願っています。

第39回日本中毒学会総会・学術集会
会長 水谷太郎
公益財団法人日本中毒情報センター・筑西市 医療監