代表理事挨拶
このたび、一般社団法人 日本中毒学会 代表理事を2025年7月に拝命いたしました。40年以上にわたり中毒学の発展にご尽力くださった先輩方に深く敬意を表するとともに、その歩みを次代に繋ぐ責務を改めて肝に銘じております。
学会、そして【推し】の学会へ
私が掲げる日本中毒学会のテーマは、「推しの学会になる」ことです。会員一人ひとりが自信を持って「この学会を推したい」「この学会を応援したい」と思える魅力あふれる組織をつくること。まずは日本で臨床中毒を学べる教育システムや毒性学としての臨床研究の創出、その上で世界へ発信できるプレゼンスの強化をめざします。
そのために、以下五つの視点から取組を進めてまいりたいと考えております:
- 多職種の連携と活性化
中毒診療は医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師から救急隊、法医学、企業、基礎研究者まで、多様な職域が関わっています。こうした特徴をさらに活かし、魅力ある学びと発信の場をつくることで、全員が推せる学会とします。
- 会員発信・教育の拡充
本学会の機関誌である『中毒研究』は、臨床・基礎・社会毒性学を含む中毒領域全体を網羅し、国内における中毒医療と研究の発展に貢献してまいりました。今後は投稿環境や閲覧性の向上を図りつつ、若手研究者や実地医療者の発表の場としてさらに活性化を目指します。
また、セミナー、ケーススタディ、実践的フォーラムなどを拡充し、初学者からベテランまでが学び続けられる機会を提供します。会員の発信が、他の誰かの学びとなり、そして「この学会を推せる」という実感へとつながっていくことを大切にします。
- 運営の効率と会員サービスの向上
本学会では、学術集会や各種申請手続きのオンライン化、学会誌の電子化などを通じて、参加しやすく、わかりやすい運営体制の整備に取り組んでいます。今後も、利便性や透明性を高め、すべての会員が安心して学会活動に参画できる環境づくりを進めてまいります。
さらに、東日本地方会・西日本地方会の活動をより充実させ、地域の実情に即した教育・研究・情報共有の場を提供することで、全国の会員が学会活動に関与しやすい体制づくりを進めてまいります。
また、国立医薬品食品衛生研究所をはじめ、全国の科学捜査研究所や衛生科研究所との連携を強化し、行政・研究機関と臨床・現場をつなぐネットワークの構築を推進します。これにより、現場で得られた知見や研究成果を学会全体で共有し、中毒学の社会的価値を一層高めていきます。
- 国際化と広報の強化
本学会は、日本毒性学会と共同して英文誌『The Journal of Toxicological Sciences』および『Fundamental Toxicological Sciences』を発行しており、国内外の研究者に向けた情報発信を行っています。これら英文誌を通じて、日本発の中毒・毒性学研究を国際的に広く届ける取り組みを今後も推進してまいります。
あわせて、国際毒性学連盟(IUTOX)などとの連携を継続・強化し、世界に開かれた学会としての役割を果たしていきます。また、SNSやウェブサイト等の広報活動も強化し、学会活動の魅力と社会的意義を可視化することで、次世代の関心と信頼を得られるよう努めてまいります。
- 創立50回記念事業の実施
本学会は、本年で第50回学術集会を迎える節目の年となります。この歴史的機会を記念し、記念誌の作成を含む特別事業を企画・実施いたします。
これまでの軌跡を振り返り、未来への展望を共有する場として、会員全員で祝う機会としたいと考えております。
ひとりの「推し」だけでなく、全国・全世界において、会員一人ひとりがこの学会を団体として、また学会として「推したい」「誇れる」存在にするため、知恵と力を結集して参ります。
皆様のご参加、ご支援、ご協力を心よりお願い申し上げます。
2025年7月
代表理事 伊関 憲